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大統領選以上に注目を集める『議会選挙』

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11月3日の大統領選まで残りわずかとなりました。
大統領選がマーケットにとって重要なイベントであることに変わりはありませんが、いま投資家の間でより話題になっているのは、同日行われる『議会選挙』です。

実は、マーケットで注目されている『経済対策案』や『税制改革』といった法案は、大統領の一存だけでは行うことが出来ません。

必ず、上院議会と下院議会の承認が必要になるのです。

そして現在の議会構成は上院が共和党(トランプ大統領の政党)、下院が民主党(バイデン候補の政党)となっています。

ちなみに、議席数は上院が定数100議席に対して共和党が53議席、民主党が47議席となっています。また、下院は定数435議席に対して民主党が235議席、共和党が199議席です。

法案は上下院共に単純過半数を越えれば、議会で可決されて大統領に送付されます。しかし、上院には『フィリバスター』と呼ばれる議事妨害が存在するため、ストレートに法案を通過させるためには上院議員の6割が賛成する必要があります。

現在の議会はねじれの関係にあるため、財政出動や税制改革といった法案が通りにくくなっているのです。

議席数に注目すると、下院議会は36議席の差で民主党が取っており、今回の議会選挙でも民主党が過半数を取ることが確実視されています。
一方、上院議会は僅か6議席の差で共和党が支配しており、今回の選挙で民主党支配へと変わるかもしれないと言われているのです。

仮に大統領選が世論調査通りにバイデン候補が勝利し、上院議会も民主党が勝利すれば『ホワイトハウス、上院議会、下院議会』のすべてを民主党が総ナメする『トリプルブルー』が実現するかもしれないのです。(民主党のシンボルカラーが青なのでそのように呼ばれています。)

しかし、上院で民主党が6割を超える議席を確保するのはほぼ不可能とみられている

先ほど、法案をストレートに通すためには上院議会で6割の賛成票を確保する必要があると言いました。
しかし、この”6割”というハードルは、どちらの政党も超えることが出来ないと見られています。

最新の上院議会に関する世論調査を見てみましょう。

上院議員は各州から2名ずつ選出され、2年に一度、3分の1が改選されます。上の地図で灰色の州は、今回の上院選挙が無い州です。

選挙が行われる各州の世論調査を調べると現在、民主党が『49議席』、共和党が『48議席』を確保する可能性が高く、残りの3州がトスアップ州(民主党と共和党の支持率が拮抗している州)となっています。

つまり、民主党が過半数を超える51議席を取ることはあっても、フィリバスターを回避する60議席を取ることは困難と見られています。

逆に上院で民主党が60議席以上を取った場合、主張する2.2兆ドルの追加経済対策案を難なく通すことができるようになるわけです。

とはいえ、上院で過半数を取ることには大きな意味がある

フィリバスターが宣言されると、理論上は永遠に法案成立を妨害することが出来ます。

しかし、そうは言っても大統領選直後ともなれば、それは民意を反映した『過半数』になる為、民主党が51議席以上を獲得するトリプルブルーとなれば、一部の共和党議員が妥協する可能性が高まると言えるでしょう。

このケースでは、上院議会で揉めることはあっても、民主党が主張する追加経済対策案に近いものが通ると思われます。

大統領はトランプでも構わない?

この話はまだコンセンサスになっていませんが、上院と下院議会を民主党が取ってしまえさえすれば、大統領はトランプでもバイデンでも構わないという見方をする投資家が出てきています。

歴史的に見ると、トランプ大統領の所属政党である共和党は財政規律を重んじる政党です。

現在、ムニューシン財務長官(共和党)とペロシ下院議長(民主党)の間で行われている経済対策協議も民主党が2.2兆ドルを主張しているのに対して、共和党は1.6兆ドルまでしか許容しないとしています。

しかし、共和党の中でもトランプ大統領とムニューシン財務長官の『本音の立場』はかなり異なっており、実は金額への拘りはそれほど無いと言われています。

先日、トランプ大統領はラジオ番組で、思わずその本音を漏らしています。

番組の中でトランプ大統領は『はっきり言って、本当は民主党が言っている2.2兆ドルよりも大きな財政出動をやりたい。私がやりたいことは、共和党や民主党が考えているものよりも大きい』と言っています。

それにも関わらず、ペロシ下院議長との協議で1.6兆ドルまでしか金額を引き上げないのは、現在の上院議会が共和党によって支配されているからであり、仮に2.2兆ドルでペロシ下院議長と合意しても上院で突き返されることを知っているからです。

そのため、上院議会を民主党が支配した場合、トランプ政権が民主党案で合意する可能性は意外と高いと見られています。(もちろん、犬猿の仲であるペロシ下院議長に”妥協した”とは見られたく無いため、体裁上は新しく”トランプ案”を作ってそれを法案にすると思われます。)

このケースでも上院共和党によるフィリバスターの発動が可能ですが、トランプ大統領は9人の共和党員を納得させればそれを回避することが出来るため、ハードルはかなり低くなります。(民主党が51議席を取ったと仮定)

また、上述のように、『大統領がトランプ、上下院が民主党』となった場合のメリットは他にもあります。

このケースではバイデン候補が主張する、『トランプ減税の巻き戻し(法人企業増税)』と『GAFAに対する規制』が大統領の拒否権で行われない可能性が高くなるのです。

そのため、一部の投資家の間では、マーケットは『大規模経済対策』という果実だけを取り、その後の『増税や規制』という負の側面を回避することが出来るのではないかと言われ始めています。

このケースにおけるマーケットの反応については、まだコンセンサスが出来ていません。

しかし、投資家の注目が大統領選だけでなく、上院議会選挙にも集まってきていることは事実であり、その動向に注目しながらトレードをする意義は高いと考えています。

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