ニューヨークで働く現役トレーダーが考える相場観

ニューヨーク金融市場

全ての国が「金融緩和と財政出動」を行なった次の世界にあるもの

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この記事は4月2日にnoteで公開したものです。

今回のコロナウイルスをきっかけに全世界がほぼ同時に大規模な金融緩和と財政出動を行なっている。

この大規模緩和と大規模な財政出動が「全世界同時に」起きている世界で、資産を守るためには、どうすることがベストなのだろうか?

米国では失業者への給付金を$600/週にしたり、欧州でも従業員を解雇させないよう政府が補助する財政案が出ている。

日本の「1世帯に二枚の布マスク」はタチの悪いエープリルフールだとしても、欧米、中国、新興国は大規模な財政出動をこれから行なう予定になっている。

本来であれば、財政出動は税金によって資金が捻出されるが、リーマンショック以降、どの国も財政をまともに立て直せていないので、国債を発行して資金を調達するしかない。

リーマンショック以前の、QEが無かった世界では、国債は市中で消化され、政府はリスクに見合ったプレミアムを投資家に支払う必要があった。

しかし、QEが金融政策の当たり前の手段となっている現在では、政府が発行した国債は実質的に中央銀行が買い取り、中央銀行は無限に紙幣を発行して政府を支援するという、究極の仕組みが出来上がっている。

それでも「インフレが上がらなければ良い」と考える人も多いが、貨幣の価値を毀損させていることは疑いようが無いだろう。

本来、特定の国がこういうことを行うと、その国の通貨が暴落し、輸入物価の上昇という形でインフレをもたらすことはある。
しかし、今起きているのは全世界が同時に同じことをやっており、為替を通じた調整は起こりにくい思われる。

そのような中で、貨幣価値の毀損から資産を守るには「人間が増やすことができない」実物資産に投資をするしかなく、結局、”金(Gold)”にマネーが流れ込む可能性が高いだろう。

実際にその動きは金価格に連動するETFを見るとすでに出始めている。(以下のチャートはブルームバーグの記事より)

しかし、著名投資家のガンドラック氏も指摘していたが、そもそも貨幣が信用を失う形で毀損する過程において、ETFのような一種のデリバティブが本当に「実物の金と換金可能なのか?」という疑問は残る。

私自身もガンドラック氏の意見と同じで、本当に貨幣が信用を失った時は、ETFでは資産を守ることが出来ず、金に投資するなら現物がいいと考えている。

こういった一種の狼少年的な話は、確かにいつ起こるかわからない。
しかし、たったの数週間でニューヨークがゴーストタウンに変わり、これまで絶好調と言われていた米国の雇用市場も、たったの2週間で1000万人近い失業者を出している。それが今起きている現実なのである。

今、世界で起きているこの大きな変化は、誰しもが経験したことない貨幣価値の暴落に繋がるかもしれないし、世界の人口が10%減るような最悪の事態へとなるかもしれない。

投資家はこういう時こそ、様々なシナリオを妄想し、危機をチャンスに変える力が試されているのだと思う。

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