7月29日14:00(東京7月30日深夜3:00)にFOMCが行われます。
今回の注目ポイントをおさらいしたいと思います。
次の政策オプションとして考えられているのは3つ
前回(6月)の会合は5月の雇用統計が大幅に上振れ、経済のV字回復期待が高まる中で行われました。
それから1ヶ月間が経ち、7月に公表された経済指標は引き続き改善傾向にありますが、改善幅は徐々に縮小してきています。
加えて南部の州を中心にコロナウイルスの感染が広がり、一部の州では経済再開の巻き戻しが行われました。
FED高官から出て来たコメントも、コロナウイルスの感染拡大を背景に、先行きの不透明感を指摘する発言が多くみられました。
そのような中、マーケットでは7月のFOMCで政策調整が行われるのではないか、という期待がにわかに高まってきました。(といっても4割程度だと思います)
FEDが取りうる政策として、マーケットで考えられるものは、
1)イールドカーブターゲット(YCT)
2)米国債購入の拡大
3)フォワードガイダンスの変更
以上の3点と言われています。
最大の注目はフォワードガイダンスの変更があるか否か
今回のFOMCの最大のポイントはフォワードガイダンスの変更があるか否かです。
先ほど挙げた3つの政策オプションのうち、1)と2)については可能性が低いと見ています。
1)のイールドカーブターゲット(YCT)は日銀が行なっているイールドカーブコントロール(YCC)と同じもので、特定の年限の国債金利に上限を設けるという政策です。
例えば、年限が3年の米国債の上限金利を0.25%とし、この水準では中央銀行が無限に米債の購入オペを行う、といった政策になります。
通常、中央銀行が金利を誘導することができるのは短期金利のみですが、イールドカーブターゲットを設定することで、より長い年限の金利もダイレクトに誘導することが可能になります。
しかし、この政策は米国では過去に一度しか採用されたことがなく、あまり実績のある金融政策ではありません。(しかも当時は戦時でした)
加えて、わざわざそんな政策を行わなくとも、すでに長期金利は過去最低水準にある為、必要ないのでは?という意見がFED高官からも出ています。
前回のFOMCから1ヶ月足らずで、イールドカーブコントロールに関する議論が煮詰まっているとは思えず、この政策を用いた変更は無いと思われます。
次に、2)はQEの増額を意味します。
FEDは3月のコロナショックでリーマンショック以来となる量的緩和(QE)を再開させました。4月以降、マーケットの落ち着きを確認しながらQEの金額は徐々に縮小され、いまは月額800億ドル(米国債)と400億ドル(MBS)としています。
FEDのQE拡大は、銀行システムにお金を流し込み、レポやクレジットなどを安定させることが目的です。
この1ヶ月間、それらの市場はほぼ横ばいで推移していますので、今回のFOMCでFEDがQE拡大を行うインセンティブは低いと思われます。
そして、3)のフォワードガイダンス変更が市場が最も注目している点です。
ご存知のように、この1ヶ月間でコロナの感染が拡大し、一部の州では経済再開がロールバックしています。
そのため、6月に想定していた経済見通しよりも正常化への道のりが長くなったと考えるのが自然です。
フォワードガイダンスは中央銀行が『XXまで金利を引き上げません』とマーケットに宣言し、市場に長い間、緩和が続くことを期待させる手法です。
従来の想定よりも経済の正常化に時間がかかりそうなので、より長い期間、緩和が続くことを示すのは有効であると言えます。
また、従来のフォワードガイダンスは『時間軸』で市場にメッセージを送るケースが殆どでした。(例えば2021年末まで金利を引き上げないと宣言するなど)
しかし、コロナの影響は、今後どのように展開するのか非常に読みづらい為、『時間軸』ではなく、『経済指標』にリンクさせたフォワードガイダンスが議論されています。
そもそも、FEDの政策目標(マンデート)は2つあり、それは『雇用の最大化』と『インフレ率の安定(2%)』です。
今の米国は失業者が溢れており、またインフレ率も目標を下回っています。
ですので、FEDが『失業率』や『インフレ率』といった経済指標に紐づく、フォワードガイダンスを設定するのはリーズナブルであろうと見る市場参加者が増えてきました。
(繰り返しになりますが、とはいえ今回のFOMCで実際に政策変更が行われる可能性は40%程度だと思われます。)
ネックになるのは、前回FOMC(6月)からの僅か1ヶ月しか経っておらず、FEDの内部の議論(政策のコスト/ベネフィット)が進んでいない可能性です。
また、今の市場環境を見れば、緊迫した状況でないことは明らかなので、議論が不十分と感じれば、その決定は9月のFOMCまで保留されると思います。
マーケット的には、今回、FEDがフォワードガイダンスの変更を行わなくても、9月に『行う可能性がある』とパウエル議長が示唆すれば期待外れにはならないと考えています。
一方、何の示唆もなければマーケットの多少の『失望』を誘う可能性があると考えています。