コロナウイルスの『治療薬』ではギリアド社のレムデシビルが先行していますが、『ワクチン』開発で先行しているのはオックスフォード(アストラゼネカ社と共同)が開発している「ウイルスベクターワクチン」と、モデルナ社の「mRNAワクチン」です。
この二つのワクチンは既に臨床試験の第三段階(モデルナは7月27日から)に入っています。第三段階の臨床試験では第一、第二段階とは異なり、大規模な実施を行い、ワクチンの効果と安全性を検証する作業になります。
ご存知の方も多いかもしれませんが、一概にワクチンといっても種類が多く、ワクチン開発はその種類によって、メリット・デメリットが様々です。
今回は話題のこの二つのワクチンについて簡単に解説したいと思います。
まず、昔からあるワクチンの多くは、『生ワクチン』と『不活性化ワクチン』です。
ウイルスが病原性を症状が出ないまで弱める『生ワクチン』。
そして、熱処理や薬品処理を行って、毒性を無くす『不活性化ワクチン』が主流でした。
『生ワクチン』は水疱瘡、はしか、おたふく風邪などに使われています。
また、『不活性化ワクチン』はインフルエンザやA型肝炎に使われています。
このタイプのワクチンは数多くの実績がありますが、製造工程に年単位で時間がかかるという大きなデメリットを抱えています。
そこで、いま対コロナウイルスワクチンとして注目を集めているのが、先に挙げた「ウイルスベクターワクチン」と「mRNAワクチン」です。
まず、アストロゼネカ社の『ウイルスベクターワクチン』は、毒性の低いウイルスをベクター(キャリア)にして、そこにコロナウイルスの抗原遺伝子を組み込んで、免疫獲得を狙うワクチンです。
比較的、早く開発・製造ができるタイプのワクチンと言われていますが、実用例が少なく、抗体の効果が低い可能性も指摘されています。
現在、イギリス(1万人)とブラジル(2000人)で第三段階の臨床試験を行っており、ワクチン開発で最前線に立っていると言えるでしょう。
モデルナのmRNAワクチンは、人間に対する実用化実績のない新しいタイプのワクチンです。
mRNAは「メッセンジャーRNA」の略称で、特定のタンパク質を作るための設計図のようなイメージです。
モデルナのワクチンは、コロナウイルスの抗体となるタンパク質の設計図を体内に注入し、体内で抗体を作らせるというものです。
mRNA型ワクチンも開発・製造が早いというメリットがありますが、一方で常温での保管が難しいといったデメリットはあります。
何よりもこれまで承認された事例が一つもないというのが、不確定要素として挙げられます。
モデルナのワクチンは7月27日から3万人規模の第三段階の臨床試験が行われる予定です。
アストラゼネカ社の「ウイルスベクターワクチン」も、モデルナ社の「mRNAワクチン」も8月から9月にかけて、第三段階の臨床結果が徐々に明らかになって来るでしょう。
(参考記事)
・The race is on: What mRNA product will reach the market first?
・ウイルスベクターとは何ですか。
・ワクチンの種類について